kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった」を読んで

前の「人間はこんなものを食べてきた」もそうなんですが、この本も伝聞と自分の推測がきちんと書き分けられていて、さらに情報元がきちんと明記されていてよい知識本です。ちょっと推測の部分が、「これは推測ですよあくまで私の個人的な予想ですよ」と強調されすぎててうんざりする部分もあるのですが、この作者さんの慎重な性格が出てしまったと思われるので逆に微笑ましいです。

kindle本のセールではこの数週間文字主体の本で個人的にハズレしか掴まされなかったので、今回のセールで立て続けに当たりを引当てたのは凄く嬉しい。その調子で頼みますよ、kindleさん!

 

この本では主に翻訳の齟齬から生まれた本来の発言の意図とは離れた誤解を取り扱ってますが、翻訳に限らずこの手の「発言の一部だけを切り取って本来の意図を無視する」情報って世の中に溢れかえってますよね。最近では麻生さんの発言がよくこの手の手法で話題になってるのかな?

橋下さんはツイッターで反論されるのがうざくなってきたのかニュースバリューの鮮度が落ちたのか、最近はスルーされることが多くなった印象。まあ前の選挙で石原元都知事と組むと言う最大のミスをしたおかげで、私の周りでも急速に支持を落としましたからね・・・これで参院選出馬とか言い出したらホント最後ですよ。

 

この手の歪曲情報は発信側が悪いのは当然で、誤解でなく意図的にそれをする連中は絶対に非難されるべきなんですが、じゃあなぜそういう連中が現れるのかと言うとそういう情報に需要があるからなんですよね。

人間それがどんなに真実味が溢れていても信じたくない情報は鵜呑みにしませんし、それでも信じなきゃいけなくなると今度は陰謀論とかに陥る人が居るくらいなので、歪曲情報であろうとそれを信じたくなければそんなに広まらないはずなんですよ。

 

ようはこの本で扱われている「ウサギ小屋」や「エコノミックアニマル」が使われた頃、日本人の多くが世界から否定的な批判を言われるのが当然だと思い込んでいたのが原因だという気がします。

私は40代ですが、その雰囲気はなんとなく分かります。

今から30~40年前の日本の都市というと、そこらじゅうドブだらけで町中が異臭を放って、道路は排気ガスが立ち込めて、天気のいい日は光化学スモッグ警報で外に出ることが出来ないような有様でした。当時のおっさん達はいつも咥え煙草して道端で痰を吐いて電信柱に立小便をする生き物だったし、東南アジアへ売春ツアーとか当たり前に広告が出ている時代でした。子供心に世紀末で滅びても仕方が無いと思えるような状態でしたよ。良いところがなかった訳ではありませんが、悪いところが圧倒的に目だっていました。

しかも当時の大人世代は、公害の無かった子供時代を過ごしてるんですからね。私もよく親の世代から「あのドブ川で昔はよく鮎が釣れた」とか「裏山でマツタケ取り放題だった」とか言われてました。経済的には豊かになっていたかも知れないけど、当時は本当にこれでいいのかという思いも強かったと思います。

 

そんな日本も下水道の整備や排ガス規制や工場を海外に追い出したことで随分綺麗になりました。鮎もマツタケも取れないし、今の若い子や老人世代からするとまだ都会は汚れて見えるかも知れませんが、我々おっさん世代からすると信じられないくらい清潔だし、住人の行儀もよくなっているんですよ。

今の日本が昔から続いている訳じゃないんです。

正直、今の日本なら誇れます。

今の結果があるから、過去の過程も素直に肯定できます。

そんな時代になったから、この本が評価されるようになったのだと思います。

ようやく海外の評価に中身が追いついてきたところなんでしょう。

やっぱりマッカーサーの頃は、「日本は12歳の少年」でよかったのかもしれません。

ちなみに私は「活字になっていることはすべて嘘」という主義なので、歪曲情報に限らず伝聞情報をなんの裏も取らずに信じること自体おかしいと思っております。

まあ全部を自分で確かめることも出来ませんので、騙す奴も悪いけどその程度のことに騙される方も馬鹿なんだと割り切るしかないという話ですね。