kindle沼日記

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「はたらく魔王さま」終わる

アニメが面白かったので一巻でお別れしてた「はたらく魔王さま」の原作をもう一度読み始めたのですが、アニメはほぼ原作の二巻までの話なのですね。小説が原作の場合、一話で一冊使い潰すような無茶な構成も多いので、ここまで丁寧に話を膨らませているのは正直驚きました。

 

それに電撃文庫のアニメ化ではここ数年は無茶な短縮をするようなアニメ化は減っていたものの、逆に本編とは別の時期に発表された番外短編を無理に時系列に並べて再構成するような、原作を尊重するあまり逆にアニメとしてちょっと残念になったと感じるものも多かったので、今回のアニメ化は実にいいバランスだったと思います。

 

前にも言いましたが、これの原作は私個人としてはちょっと残念なんですよね。

 

これに限らず「魔王が実はいい人」ネタは、何故魔王が悪い人と認知されていたのかとかどうして今はいい人なのかってところがあまり考慮されていないことが多いんですよ。まあ元がドラクエとかゲームのパロディで発展してきてネタだし、ジャンル的にもコメディなので深く考えるのは野暮なのかもしれません。特に「はたらく魔王さま」は「はたらく」の方に比重が置かれていて、バイトの話がメインみたいなとこありますし。

 

ただ魔王と善人のギャップも題材としてはとても良いので、それを使わないのは実に惜しいと思います。それに原作2巻では鈴乃さんだけがこの作品のキャラとしては異常に魔王の罪に拘ってて、なんだかアンバランスな感じなんですよね。アニメのスタッフもそう思ったから異世界描写を多めに入れたんだと思うのです。

 

実際、戦争を仕掛けてきた人物への反応としては二巻の鈴乃さんの方が自然だと思います。その戦争でどれくらいの被害が出たのか具体的な数値は2巻時点では出ていませんが、世界規模の戦争で魔法ありなので洒落にならない数の死人が出ているはずです。それを今は悪いことしてないんだからいいだろうなんて言うのはよく言えば純情ですが、普通に世間知らずの自分勝手な主張であり、せいぜいバイトくらいしか社会経験の無い女子高生の言うことだからぎりぎりセーフというか、やっぱり盛大にアウトだと思うのですよ。

ヒトラーが第二次大戦後に何の反省もせず次こそ世界征服するぞと言いながらバイトしてたら、普通は通報するでしょ。ヒトラーが何をやったか私は知らないから悪と決め付けるあなたはおかしいとか連合軍の元諜報員に言ったら、ヒトラーが何をしてきたか淡々と説教されて終わりですよ。あれじゃちーちゃんが脳みそがピンクに染まって善悪の区別がつかなくなった馬鹿なお嬢さんじゃないですか。

 

これで魔王が自分の悪事を反省して謝罪してるならまだ理解の余地があるんですが、未だに世界征服する気満々なので被害者側が危機感を持つのは当たり前です。アニメだと魔王が遊園地で人助けする話を追加して彼の無害な部分をフォローしてましたが、それでもやっぱりちょっと無理がありますよね。

結局バトルシーンを増やしたり前半の悪役を復活させたりして、勢いに任せて魔王の過去の罪や将来に対する懸念はうやむやにしゃいましたが、いろいろと勿体無いと思います。

 

そんな訳でアニメを機会に原作を読み進めて行こうかと思いましたが、やっぱりアニメになった部分だけで止めておこうと思います。ひょっとしたら三巻以降でそのことに触れるのかも知れませんが、やっぱりアニメの10話でちーちゃんに叫ばせる前にするべき話なのだと思うのですよ。だからまたアニメで続編をして、うまい具合にその辺をフォローしてくれたら続きを読むことにしますね。