kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「帝国ホテル 厨房物語 私の履歴書」を読んで

今月のkindleセール本ですが、月ごとになったおかげでいい本でもゆっくり紹介できるのはありがたいですね。

本書は帝国ホテルのコックさんのエッセイ風自叙伝ですが、戦前から十年ほど前までの経験を分かりやすい口調で書かれてます。エッセイが好きな人や、日記風のブログを読むのが趣味の人ならきっと楽しめるでしょう。

 

この本のよいところは著者の各時代の思い出が軽快なテンポで語られていくところですね。時代小説なんかで特定の時代をどっぷりと堪能するのもいいのですが、この本では戦前から今までの時代を軽くハイキングで楽しんでいる感じです。戦前・戦中なんて私にとっては遥かな過去ですが、それがこの本では過去から現在まで基本的に庶民目線で明るく途切れることなく語られるので、自分の知らない時代と体験してきた時代が確かに地続きだったんだなぁと感じられます。

 

庶民目線ということで、お金の話題も時々出てきますが、語り口が現代調なだけに逆に今とのギャップに驚くこともしばしば。例えば若い頃の東京の安い家賃が月5円くらいって話が出てきますが、これが1940年くらいのことですよ。今の感覚だと月5万くらい・・・最近話題の脱法ハウスでも月3万弱らしいので、百年たたずに物価が1万倍ってことですね。その次に出てくるのが50年ちょっと前で映画一回150円という値段ですが、これでも十倍近くになってますね。

そのへんはさらっと語られてますが、やっぱり凄いことですよ。

たまに頭の古い愚か者が過去の経済発展をもう一度みたいな戯言ぬかしてますが、ぶっちゃけ戦後みたいな無一文の時代からやり直すのでないと無理だとこの本読んでても実感します。この二十年程度で物価は高いものでも三倍程度、服や家電にいたっては安くなっているものも多いし、パソコンなどのIT機器にいたっては安くなるだけでなく性能も格段に上がっているという夢のような時代なので、何故そんな流れを否定して辛く苦しいインフレ地獄を呼び込もうとしているのやら理解に苦しみます。

話がちょっとそれましたが・・・

私の人生設計では八十歳まで元気に楽しく生きることになっているんですが、この著者も八十歳過ぎてまだ元気に活動しておられたようなので心強い限りです。こんな風に歳をとりたいものですね。