kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「遠野物語 remix」を読んで

これも前回のカドカワセールで購入したのですが、柳田國男さんの「遠野物語」を京極夏彦さんがリメイクした作品です。リメイクとは言っても分かりやすく最近の言葉づかいで書き直して、話の並び順を変えたくらいなので、「京極夏彦柳田國男にとりついた憑きものを落とす!」みたいなお話を期待してはいけません。

ええ、ちょっとは期待していたんですよ・・・

 

そもそも「遠野物語」は柳田國男さんが現地の人から聞いたという話をそのまま書いたという設定のお話で、特に落ちもない怪異譚が列挙されているだけなので、起承転結なお話が好きな人だと読後もやもやするかもしれません。
逆に独特な雰囲気を楽しみたい方なら満足できるでしょう。


「M/Tと森のフシギの物語」の物語を楽しめる人なら大丈夫というか、わざわざあれを読んでるような人はこれも読んでる気がしますが・・・
ちなみに私は富野由悠季さんが「M/Tと森のフシギの物語」を面白いと言ってたので読んでみたのですが、「Gのレコンギスタ」が楽しめるかどうかもその辺に境界線があるような気がします。

 

遠野物語」に話を戻すと、ライトノベルや漫画にはここからネタを取った話もたくさんあるので、教養として読んでおくのもアリだと思います。設定集やwikiなんかが好きな人も楽しめるでしょう。

私自身、学生時代に一度読んではいるのですが、同時期に読んだ似たような話とごっちゃになってたので、記憶整理には役立ちました。

 

それでちょいと気づいたことがあるんですよ。
この本の中でも幽霊忌憚はいくつか語られていますが、その中の生き霊の話がきっかけです。どんな話かと言うと、大病を患って家で寝込んでいる人がいるんだけど、いよいよ危なくなったぞという時に知人の家にひょっこり訪ねてくるんですね。それで知人もお茶などを振舞って歓迎して、その人が帰った後に訃報を知らされるという話です。
よくある話なので聞いたことのある人も多いでしょう。
その顛末として、振舞ったお茶が全部床にこぼれていて、やっぱり幽霊だったんだと納得する話が収録されているんですよ。幽霊は幻覚みたいなものだから、物を食べたり飲んだりはしないと昔の人なりに考えてのことなのでしょうが、私自身も似たような感覚を持っているのでその話に凄く納得したんです。

 

同時に、あるお話に凄く納得できなかったことを思い出したんです。
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」という長いタイトルのアニメがちょっと前にあったんですよね。どういうお話かと言うと、幼い頃に死んだ女の子の幽霊が主人公の元にやってきて、疎遠になっていた幼馴染達といろいろやるというものでした。

その女の子の幽霊というのが、主人公にしか姿は見えないけど物に触って動かすことが出来るというものだったんです。「遠野物語」的幽霊の姿は見えるけど幻覚みたいなものというのとは真逆の存在ですよね。

遠野物語」的な解釈だと、その子は幽霊じゃなくて狐狸や狢の類なんですよ。
つまり「遠野物語」だと主人公は死んだ幼馴染を騙る狸に化かされていた的なお話になっちゃうんです。あるいはもともと狸だったんだけど、姿を見破られたので死んだことにして皆の前から姿を消していたのかもしれませんね。
主人公にしか姿が見えないというのも、昔に正体を見破られたことが関係していたのかもしれません。

 

まあ昔話には物に触れる幽霊というのも存在していて、耳なし芳一なんかが有名ですよね。
ただこの辺は幽霊と聞いた時にどちらを思い出すかという話で、「遠野物語」的な幽霊を思い浮かべちゃう人にはあの話は共感できなかったんだろうなと・・