kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「ハーモニー」を読んで

カドカワのセールで買った本をようやく読みつくしたので、カドカワ以外の本を物色。伊藤計劃の三冊目の長編です。

虐殺器官」の時も書いた気がしますが、やっぱり作者の生き様がドラマチックなもので、読んでてもどうしてもそっちの印象に引っ張られやすいですね。

 

この本は「虐殺器官」から半世紀ほど後の世界を描いてますが、「虐殺器官」を読んでなくても特に問題ないです。テーマ的には究極の管理社会とはどんなものか・・・みたいな感じの話です。

 

人口が減った結果、人を大切にする社会が出来たという設定は好みですね。
私も子供の数が多かった頃に生まれ育ってますから、数が多いとどれだけ雑に扱われるかというのは身にしみています。
人口が多い=1人当たりの取り分が少なくなる=人件費が安い=高度成長
という図式が存在する訳で、安く働いてもいいなら高度成長という名の暗黒期に戻ればいいです。暴力と公害の満ち溢れたあの頃に・・・


私はあのより多くを得る為に他人を追い落として奪い合う世界には二度と戻りたくないので、この本みたいな社会の方がマシだと思うんですが、あの暗黒期を体験したことのない若い人たちにはこの本みたいな世界だけでなく、今の日本ですら窮屈に思えてしまうのでしょうか。

そんなことを考えるといろいろと悩ましいですね。

 

この作者も弱い者が夕暮れにさらに弱い者を叩くあの暗黒期に青春時代を過ごした訳で、テレビゲームの世界に没頭することであの世界から距離を置いて生きてきたという感じでしょうか。逃避にはいいですよね、テレビゲーム。無理に世の中と関わらずに楽しめる訳で、獲物を失った連中が新たな獲物を求めて海外に流出する理由の一つになっていたのかも知れません。

 

そんな感じで結局作者のことを考えてしまうのが良い部分でもあり悪い部分でもあるんですよね・・・