kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

伊藤計劃「The Indifference Engine」を読んで

伊藤計劃さんの短編集ですが、例によってkindleのポイント還元セールでゲットしたのですが、ちょいと私には合わなかったです。

 

合わなかったというか、二次創作的なお話が多いので、元ネタ知ってないとよく分からないです。伊藤計劃さんの文体が好きというなら買いですね。

そんな中で表題作は独立性が高いので、他の作品を知らなくても十分楽しめました。それ以外はかなり人を選びますね。


ただ最後の「屍者の帝国」はかなりエンターテイメント性が高くて面白そう。
残念ながらプロローグのみの掲載ですが・・・

 

この作者の傾向として、人の意識とか思考なんかがテーマになっていますが、これは現状だととても難しいですね。
私の考えでは、人の意思決定の大半は言語に頼っていません。だから犬や猫にも意識はあるし、考えることもできるのです。
言語というのは意識の本質ではなく、意識を計測する為の物差しのようなものでしょう。しかも精度はかなり悪いので、完璧な計測は出来ません。
物差しなので、言語を使って意識を図面化することは可能ですが、精度が悪いのでその図面から意識を再現しても元の通りにはなりません。
質の悪い模造品しか出来ない訳です。
それを避ける為に言葉そのものの精度を高めようと努力している作家さんもたまに見かけますが、ちょっととんがり過ぎて一般の受けはよくなさそうですね。

 

この作者さんのお話には、意識を薬物や機械でコントロールするものも多いですが、これは個人と社会との関係性に食い違いが発生した場合にどうするかという話ですね。
社会に適応させる為に個人を制御するか、個人の自由に任せて社会を崩壊させるかという二択な訳です。
これはまあ我々の生きた時代の宿命というか、社会が複雑化していく中でそれに適応していない人がたくさんいますからね。今だと半分くらいの人は適応していないんじゃないでしょうか。


こんな状態で個人を放置してると、「自分が正しいから正しい」という輩が虐殺を始めてしまうので、私としては個人の自由を制限する管理社会の方がマシだと感じることも多いです。
ただ時間とともに自己の利益の為に他人を蔑ろにする人達より、自己の利益と社会の利益が一致する人達の方が増えてくると私は思っているので、今はひたすら待ちの構えです。
作者さんも、この先どうなるかは凄く気になってたんでしょうね。
そんな世界を見届ける為にも、私は80歳まで生き延びようかと思います。