kindle沼日記

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「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見てきました

マッドマックス 怒りのデス・ロード」を見てしまったのですよ。

ひゃっはー!!

まさか21世紀という表現にも新鮮味が失われたこのご時世に、こんな世紀末作品を見せられるとは完全に不意打ちでした。いろんな意味で凄すぎます。

 

これは全編がバイオレンスで溢れ返っているので、暴力的表現が苦手な人は見に行くべきじゃないです。ただのバイオレンスじゃなくて、人間が人間扱いされていないので、ホント注意してください。
この世界での人間なんて、一部を除いてぶっちゃけ家畜とか消耗品です。
「Gのレコンギスタ」でクンタラという蔑称が出てきましたが、多分彼らもこんな扱いを受けていた人々なのでしょう。


このスタッフに人権って何かと尋ねたら、「三丁目のゴミ捨て場に捨てられていたのを見た」と答えるに違いありません。ストーリーとは何かと尋ねたら、「今からゴミ捨て場に捨てに行くところだ」と答えることでしょう。
この映画にはマジで暴力とカーチェイスしかありません。
そんな人達だからこそ、あそこまで見事な世紀末感を構築出来たのでしょう。

 

さて世紀末感と言っても今の若い人たちにはピンとこないかと思います。
昔の・・・今から三十年くらい前の時代では、多くの人が二十世紀中に世界が滅びると信じていました。完全に信じてはいない人ですら、その可能性に相当な不安を感じていました。
理由はアメリカとソ連の冷戦とかいろいろあるんですが、今にして思うと一番大きな理由は経済成長です。
かつて経済成長の名のもとに多くの森が切り開かれ、川や海が汚染されました。
排気ガスで大気は薄汚れて、光化学スモッグで外に出ることすら不可能になりました。
牧歌的な価値観は駆逐され、儲けの為なら何をやっても許されるという風潮がはびこりました。
大人達は自分達がかつて遊んでいた森や川や公園を、自分達はもう遊ばないし金が欲しいというだけの理由で、そこで遊ぼうとする子供達を力ずくで追い出してビルや工場に作りかえて行ったのです。
そんな世の中を見て未来に希望を持てというのがそもそも無理な話で、このままいけば近い将来人が住めなくなってしまうという不安や、自分勝手に環境を作りかえる連中なんかむしろ滅びてしまえという怒りが世の中に広まっていたのです。

 

具体的には、まずは欧米で広まってその後に日本が続いた感じですね。

世紀末で世界が滅びるというお話が世界中で量産されたのです。
今公開されているターミネーターシリーズもその傍流で、あれは世界が滅びる前に何とかしようというお話ですね。


日本でもそんな世界は滅びるべきだというデビルマンや、滅びた後の世界を描いた「北斗の拳」からエヴァンゲリオンまでいろいろな作品が生み出されました。

まあ実際には世紀末に世界は滅びず、人々のストレスの元になった各種の開発や汚染は
徐々に先進国から追い出されて、中国やらの後進国に輸出されたので、世紀末的作品は一気に廃れていった訳です。だからここまで見事な世紀末感を今のご時世に再現されるというのは完全に不意打ちでした。
最近は昔の名作を今風にリメイクする流れが多くて、これもその一環だろうと軽い気持ちで見に行ったのですが、むしろ時代に逆行しようとする作品だった訳です。

 

とは言えこのバイオレンスに次ぐバイオレンスでストーリーは付け合わせというのは、バイオレンスを萌えに置換すれば日本のアニメ業界でもよく行われている訳で、そういう意味では今の世の中との親和性も高いのかも。
裏設定がみっちりとありそうなところもオタク心をくすぐられますね。

ストーリーはないと言いましたが、世界観の構築には物凄い労力を注ぎ込んでます。

 

いやはや、それにしても実も蓋もなく凄い映画でした。
最近では太平洋戦争時代の特攻を無駄に美化してる阿呆が増えてますが、碌に教育を受けていない無知な若者と人権無視の権力者と未来に対する絶望がセットになると、無学な若者がいとも簡単に特攻を選ぶということをこの映画はまざまざと描きました。
権力者に富が集中してやりたい放題に出来る、これも経済成長真っ只中の特徴ですね。
程度の差こそあれ、日本でも権力者が金儲けの為に好き勝手をして、公害病があちこちで溢れて、そんな世の中に絶望した若者がテロに走って人を殺しまくるという時代がありました。
40年前くらいがピークですかね。私が子供の頃も、その残滓があちこちにこびりついていました。
それを結集させたのがエヴァンゲリオンで、子供というものが大人の為の便利な道具として扱われていました。弱い者たちが夕暮れにさらに弱い者を叩いていた時代です。
庶民にとって苦しく、権力者にとっては天国だった「美しい日本」の時代ですね。
バブルが弾けて正気に戻った人達が、そんな狂った連中を海外に追い出してようやく今の過ごしやすい日本になったのです。
政治屋達が口を揃えてその時代を「失われた」といいますが、我々庶民にとっては人間性を取り戻した時代です。

 

この映画はそんな唾棄すべき昭和を思い出させてくれる、救いのない絶望的なお話です。私はこの映画を誰にも勧める気持ちはありませんが、昔は良かったなどとほざく連中にはぜひとも見ていただきたい作品ですね。

 

ひゃっはー!!!