田中ロミオ著「犬と魔法のファンタジー」を読んで
kindleで田中ロミオさんの新刊が出たので読んでみたのですよ。
これはファンタジーと謳いながらも「人類は衰退しました」とは趣が異なりますね。
どちらかというと「AURA」とか「灼熱の小早川さん」と同系統の青春ものです。
ってか、普通に現代ものとしてやったらいいんじゃないのという感じ。
それというのも舞台となる世界の価値観とか社会状況がほとんど現代日本だからです。就職活動に苦しむ大学生のお話です。
スマフォやらアプリやら現代っぽいものが、わざわざファンタジー的に言いかえられててややうざい・・・
面白いかどうかで言うと面白いですが、楽しいかどうかで言うと楽しくはないお話でした。少なくとも娯楽小説ではないですね。ブンガクの匂いがします。
一般的なお話にしては主人公の体力設定が特殊すぎるし、無駄にファンタジー設定をねじ込んでくるし、そのくせやってることは普通に就職活動なのでいったいどの層に向けて書いてるのかと不思議に思ってたら、後書きで「夢も希望もないファンタジーにする」ことが目的として書いてて相変わらず趣味が悪いなぁと・・・
その割には詰めが甘いんですよね。
唐突に始まる最後の冒険譚がそれなりにファンタジーしてて、物語としてなんらかのオチはつけないといけないという事情は分かるんですが、それまでのお話との落差がですね・・・
この唐突な付け足し感を最近他でも感じたなぁと考えたら、「バケモノの子」でした。
内容はまったく違うんですが・・・一郎彦を主役にしたらこんな感じになるのかも知れません。
個人的には取ってつけたような冒険譚じゃなく、もっと現実的な範囲で現実に折り合いをつける淡々としたバージョンも読んでみたいです。人に夢と書いて儚いというくらいのレベルの話にしたらよかったのに・・・