kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「下ネタという概念が存在しない退屈な世界 11」を読んで

下ネタという概念が存在しない退屈な世界」もついに今回が最終刊。

 

このシリーズは個人の嗜好が制限される社会で、そんな社会を変革しようと試みる若者達を描いた政治小説です。それだけで若い読者は目をそむけそうですが、非暴力に徹して表現の自由を体現するパフォーマンスだけで社会に立ち向かう様は、派手な展開になれた最近の読者の皆さまにはさぞ退屈に思えたでしょう。


この巻でも、冒頭で規制派実動部隊と反社会テロリストとの抗争が初めに描かれていますが、どんな派手なバイオレンスかと思えばテザー銃とローションで対決するというありふれた展開でしかありませんでした。
つかみがそんな具合にありふれた感じですから、普通の人には退屈な展開かもしれません。


でも声高に正義を叫んで誰かを攻撃しただけで世の中がよくなるなんて思わず、誰もが少しずつ間違っているのだから皆で反省して世の中をよくしていこうという主人公の主張が私は好きです。
正直、シリーズの途中からフォーカスが主人公達若者から社会全体へ移った感じがあって、主人公自体の物語はほぼ完結していたので、全体のケリを付ける為に11巻は存在しているという感じです。
そのせいか主人公だけでは一冊にするのに分量が足りず、シーン増量の為に新キャラが追加されています。
まあケリがつくだけありがたいです。
アニメ化した後は二期目・三期目を狙ってずるずる引き延ばしをした挙句に、初期の志を失ってフェードアウトするシリーズも多い中、引き延ばさずにきちんと終わらせてくれたのですから。
それに二期があったとしても、もう会長のあの声は聞けませんからね・・・

 

退屈でありふれたシーンばかりだけど、真面目に政治と社会の変革について描いたこのシリーズ。
ちょっとふざけた感じの表紙に騙されず、一度は手に取って通勤の時にでも読んでいただきたいと私は切望します。
誰かがちらりと覗き見しただけで、あなたの社会人人生が終了しかねない素晴らしい小説ですよ?