kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

森見登美彦著「有頂天家族 二代目の帰朝」を読んで

森見登美彦著「有頂天家族 二代目の帰朝」を読んだのですよ。

 

 安心してください、「四畳半神話大系」とタイトルが似ていただけの「四畳半王国見聞録」と違って、こちらはまっとうな続編です。毛深い毛玉達の物語です。

 

続編なので雰囲気もそのままで、前の話が好きな人なら迷わず読むべし。
内容的には日常主体の緩いファンタジーで、今期だと「この素晴らしい世界に祝福を」なんかが好きな人にはお勧めです。

 

前の話では主人公の前には決して姿を現さず、常に何かに隠れて主人公を罵倒し続けていた元許婚の海星ですが、今回は主人公に姿を見せない理由が明らかにされます。その理由だけでもこの話を読む価値ありです。


いろいろ裏設定がありそうなものがちりばめられていますが、万事にゆるすぎていろいろ突き詰めていくと破綻しているので、あくまで雰囲気を楽しむ為の小道具と割り切っておいた方がよいでしょう。
いくら天狗が長生きだからって、まだ二代目とか代替わりしてなさすぎとか考えちゃう人には駄目です。設定厨な人は要注意。
割り切れる方なら、「聖なる怠け者の冒険」もお勧めしておきます。

二男の矢二郎っぽい登場人物も出てくるので、好きな人には倍プッシュ。

 

 

それにしてもかつては間違った方向にばかり努力して誰にも認められず世の中を僻んだ若者の悶々とした薄暗い情熱を面白おかしく書いていた著者が、この本みたいに家族愛を主体とした話を書くようになるとは、人とは変わるものですね。
昔の作者なら、帰ってきた二代目があちこちにくだらない嫌がらせをして、誰からも嫌われながらも見栄を張って生きていく話になっていたと思います。

そういう話もちょっと読んでみたい気がしますが・・・