kindle沼日記

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米原万里著「オリガ・モリソヴナの反語法」を読んで

kindleの日替わりセールで安かったので買ったのですよ。

 

内容的には同じ著者の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」とけっこうかぶってますね。
あっちがかつての同級生を探す話で、こっちがかつての恩師の過去を調べる話です。
どちらも調査とチェコソビエト学校の思い出話がメインなので、そりゃ印象は似てきますね。
こっちの話はフィクションで嘘吐きアーニャはノンフェクションなので、読んでると頭がこんがらがって現実と虚構の壁が崩れそうになります。

 

タイトルの反語法というのは、相手を罵倒する時に「おお、なんと素晴らしい」と持ち上げてから落とす手法のことだそうで、それを多用したオリガ・モリソヴナという口の悪い踊りの先生は実在したそうですが、この本で書かれているオリガの経歴なんかはフィクションだそうです。
そんな訳でオリガ・モリソヴナという女性の経歴は無駄にドラマチックですが、そんなフィクションが成立しちゃいそうな背景が当時のソ連にはありましたからややこしい。
政治家や歴史学者ではなく一般市民(ただしエリート)の目線で書かれてますので、当時のロシアの雰囲気を知りたいという層にはたまらない本だと思います。

 

第二次世界大戦から冷戦終了の頃のソ連圏の生活なんて何もかも物珍しい感じですが、日本の方も外から見ればそんな感じなのでしょうね。
この本では市場開放した頃のソ連で日本人がどれだけ浅ましいことをしていたかも書かれていますが、1990年頃の日本人と言えばエコノミックアニマルと揶揄されて、世界の各地で大金を使って買い物してゴミを散らかして騒々しい品のない奴らという認識でしたからねぇ。
その後我々の世代が大人になって、今の礼儀正しくて清潔な日本というイメージを築いた訳です。
そんな訳で当時の下品な日本人世代が、今の上品な日本のイメージに乗っかって今の下品な中国人を馬鹿にしている様を見ると、私なんか奴らを後ろから蹴り倒してやりたくなるんですが、そんな時はオリガ・モリソヴナのように上品に罵るように心掛けないといけませんね。
「おお、なんと素晴らしい社会道徳の持ち主だ、自分の行いを棚に上げて他人を注意するなんて、まさに無粋の極み!」