kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

手代木正太著「魔法医師の診療記録」を読んで

水嶋ヒロの「KAGEROU」を熱く語ることには定評のある「バーナード嬢曰く。」ですが、その登場人物の神林しおりによる「KAGEROU」評にはいたく共感したのですよ。

 

「日本語としては間違ってないはずなんだけど、比喩や言い回しや一文の長さやいろいろな部分が不自然というか適切でないようで、読みながらずーっとモヤモヤする」「一生懸命たくさんの比喩やぎこちない言い回しを使って、明らかに無理をしている」感じ。

 

私は「KAGEROU」を読んだことはないのですが、それって新人さんの小説でたまに感じることがあるんですよね。
そんな訳で最近それを感じたのがコレ。

 

この本はアイデア自体はファンタジーと医療を組み合わせるということで、既に魔界医師メフィストみたいな先駆者があるものの、あまり開拓されてはいないジャンルです。

ストーリーは単純な勧善懲悪で、登場人物も良いキャラ悪いキャラどれもステレオタイプで、あまり深みは感じません。
そんなことを言ってると二番煎じであまり面白くないみたいに聞こえるかもしれませんが、この作品の読みどころは設定でもキャラでもストーリーでも文章でもありません。
文面から滲み出る、なんとか面白いものを書こうという作者のパッションなのですよ。


神林しおり曰く、「必死に背伸びする高校生のようにどこまでも不器用でひたむきな小説」なのですよ。

何所かで見た設定やよくあるキャラが溢れている昨今、結果はともかく一生懸命頑張っているその姿勢は評価したいところです。

ガガガ文庫なので、初巻が kindle unlimited で読めるのもありがたいところ。
こんなに胸をかきむしりたくなるような小説は、「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」以来ですよ・・・