kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

フィリップ・K・ディック著 浅倉 久志訳「ユービック」を読んで

バーナード嬢曰く。」で神林しおりが裏表紙のあらすじで酷いネタばれをしていると憤慨していた本。

 

電子書籍ならそんなネタばれを踏む必要がないので購読しました。

 

内容は・・・まあディックですね。
実は私は、かつてブレードランナーを見た後に「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を読んだことがあるのですよ。
それ以来、映画のブレードランナーを面白いと思った人は原作を読む必要はないと主張しています。
何を面白いと思うかは人それぞれですが、ブレードランナーとその原作じゃ面白さのベクトルが違います。
特に序盤。原作の序盤はなんというかその、グダグダじゃないですか。
何所にでもいそうな夫婦生活に不満を持ったおっさんの世の中への不満を、ダラダラ書き出しているだけじゃないですか。

 

あの原作からブレードランナーを作り出したスタッフは凄いと思うんですよ。

よく原作無視なアニメ化で叩かれたりしていますが、あれは結局スタッフの力量の問題にすぎません。
原作と違うから叩かれてるんじゃなく、面白くないから叩かれてるだけです。
面白かったら原作と違っていても絶賛されてますよ。
実際ブレードランナーむっちゃ面白いし、叩かれてないし。
そんな訳でデック原作の映画を見て面白いと思っても、ディックの本は読まない人生を過ごしてきました。

 

この本は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」よりは読みやすいですが、なんといいますかロシア文学的というか主人公がやる気無さすぎてかったるいです。
イデアはいいと思うんですよ。
人類が進化して超能力者になるとか、冷凍人間とかの設定は、40代のおっさんからしたらちょっと古臭く感じますが、今なら逆に新しいんじゃないでしょうか。
そうじゃなくとも能力者バトル的に捉えることも出来ますしね。
展開も凄くて飽きさせません。
設定が良くて展開も凄いのに、ここまでかったるく感じさせるディックさんの文才にはほとほと呆れかえります。


今ならマンガ原作者として大成できそう。
荒木飛呂彦さんが自由に漫画化したら無茶苦茶面白くなりそうですよ、コレ。

神林しおりは不思議がっていましたが、私的にはあのネタばれあらすじを書いた人の気持ち分かるような気がします。

だってやる気のない主人公がぐだぐだやってるだけの序盤だけだとほとんどの人が脱落しそうだし、その先に凄い展開があるということを何としても知ってもらいたかったんだと思うんですよ。
話の構造に気づけば凄い面白いのに、表面的な部分が凄くだるいですからね、ディック。
それでも「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」よりは、こっちの方がマシですけど。

 

いやまあ今でも映画の原作者としては凄い成功してますよね、ディック。
トータルリコールも面白かったし。
でも原作はやっぱり読まないでおこうと思います。

 

ディックの本を二冊しか読んでないのにここまで語れちゃうのは、きっと町田さわ子のおかげです。