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kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

こうの史代著「この世界の片隅に」を読んで

映画も良かったのですが、せっかくなので漫画の方も買ってみました。

当然というか、雰囲気は映画と同じですね。 映画の方がカラフルな分だけ透明感あるかな?

ストーリーはこちらの方がエピソード多くて、映画は尺の都合でちょこちょこ削ってますね。

特に印象の変わるのが遊郭で出会った女の人で、映画では本人の口からそれとなくすずさんが子供の頃に出会った座敷わらしの正体であることを示唆されますが、漫画の方では別の役割を与えられていて、座敷わらしの件は番外編的な感じで書かれていて、すずさんには語られることなかったです。
驚いたのが玉音放送の後のすずさんの叫びで、漫画の方だとかなり直接的に当時の体制批判をしていますね・・・

映画の感想の時に書いた私の意訳よりはっきりとわかりやすく言い切ってます。 映画では削られていたシーンでは、遊郭の女性とすずさんが嫁の役割について語るのがなんとも切ないです。

嫁は跡取りが生まれるまでは生み続けて、跡取りが成長途中で不幸なことになった時の為に予備も生むという話をするんです。 でも医療の進歩やインフラ整備で衛生状態が良くなったおかげで、産んだ子が死ににくくなって人が溢れた結果が、あの戦争なんですよね。

国内の生産量だけじゃ予備として生まれた子達を養いきれなくなって、外国の土地を奪わなきゃいけなくなったんです。

もし奪えなくても、帰ってこられたら困りますから負ける時は全滅するように教育したんです。

国内に残った高級将校や政治屋達が裕福に暮らす為に、下々の男達は外国に送られて、負けても帰ってこれなくする為に無茶な命令を与えられてたんですよ。

そりゃすずさんも「私達は結局暴力で支配されてたんか」と叫びますよ・・・

 

ちなみにこの予備の子を生んだのに思ったより子供が死ななかった問題は戦後も起きていて、今は戦争で人を減らしたり出来ないから超高齢化社会になっちゃったんですよね・・・ まあ若い頃に死んでいる予定だった連中もそのうち寿命で本当に死んじゃうので、後三十年くらいの辛抱です・・・

実は冒頭の人攫いのエピソードの種明かしが漫画の方でされていないか期待していたのですが、そちらの方は漫画でも特に深くは掘り下げられていなくて残念。

すずさんが広島に出た時に海苔を一枚無くしたのは事実のようなので、海苔を使って周作さんと何かしたのは間違いないようですが・・・

 

何気に切なくなるのが、巻末に書かれてる「間違っていたなら教えて下さい 今のうちに」という作者の言葉です。

記憶も記録も時間が経てば経つほど消滅していくものですから、切実ですよね。

私も広島にはそれなりの期間住んでいましたが、江波なんて全然あの頃の面影なかったですし。

 

 

昔は当たり前にあったものが時間とともに消滅していく、その危機感と喪失への抵抗がこの漫画の本筋なのでしょう。

そう考えると「君の名は。」と背中合わせの作品なのかもしれません。

 

反戦という意味では過去の悲劇の記録を残していくというのを縦糸に、今世界のどこかで起こっている悲劇を理解するというのを横糸にして、かつて起こった出来事が決して過去にしか起こらない悲劇出ないと学ぶことが重要だと思います。

そういう意味ではこの作者が現在の世界をどのように捉えているかも見てみたいですね。