kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

森博嗣著「彼女は一人で歩くのか?」を読んで

ちょっと前に森博嗣さんの各シリーズの一巻がkindleで百円になっていたので、片っ端から買ったのですよ。

推理小説に関しては相変わらず殺人をエンターテイメントの如く扱う趣味の悪いものばかりでうんざりしていたのですが、一冊だけSFが紛れ込んでいて、それがけっこう楽しめたのです。

 

時代的には今から二百年後くらいのお話で、人類が病気や老衰で死ななくなるほど科学が発展した代わりに、延命処理された人間からは子供が生まれなくなったという超少子化がテーマになっています。

設定だけ聞くと凄いディストピアなのですが、主人公が呑気というか飄々とした人物で、好きな研究さえしていれば他に何もいらないという学者バカなのでディストピア感はありません。

 

この主人公の研究が元で謎の組織から命を狙われることになるのですが、それで恐怖したりすることもなく、研究に集中できなくて迷惑だなぁ程度の感想しか出てこないんですよね。

それどころかあまり自分が狙われているという自覚がなく、退屈になるとふらふらと一人で外を出歩くような迂闊な人物なのです。

けっして馬鹿ではなく、むしろ頭の回転は早いのですが、危機意識が希薄というかとにかく呑気なんですよ。

 

そのボディガードに無口で感情を表に出さない女性がつくのですが、彼女のプロフェショナルな行動と主人公の素人丸出しな行動の差がとにかく面白いのです。

ボディガードからすれば主人公なんて道理のわかっていない子供のようなものなのですが、立場的には主人公の方が上なので逆らえません。

それに主人公も彼女のことをないがしろにしたりせず、むしろ敬意を持って接してくれているのですが、狙われている自覚がないので彼女からすれば危なっかしくて仕方がないのです。

それでいてピンチの時には主人公の機転で助かったりするので、彼女からすると色々と複雑な心境。

まあ無表情な人なのでそんな心境は表に出さないのですが・・・

それにそもそも主人公の迂闊さでいつもピンチに陥っているのですが・・・

 

そんな凸凹コンビが楽しい本ですね。

シリーズ物なので一巻は物語としてかなり消化不良なところで終わってしまうため、次も読もうかと思います。

ちょうど50%ポイント還元セール中なので・・・

 

設定的にも経済発展を捨てて安定した世界になっていたりと興味深いところが多かったりしますが、最近ニュースとかでよく見る人工知能に仕事を奪われる的な的はずれな心配をそのまま現実にしちゃいました的な短絡的な部分もあって、やっぱり趣味の悪いのはジャンルの問題でなく作者の方なんだなと・・・