kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

清水潔著「南京事件を調査せよ」を読んで

kindleの日替わりセールでお安くなっていたので買ったのですよ。

 

普段はこの手の本は買わないのですが、まあ夏のこの時期は教養の為に一冊くらい読んでおこうと思ったのです。

 

まず私の立場を説明しておくと、「戦争は犯罪」派です。

だから戦争を裁いた東京裁判は実に有意義なものだったと考えています。

あそこで原爆投下や市街地の空襲などアメリカ側の罪も裁いていたのなら、もっと世の中も良くなっていたでしょうが、それを怠ったせいで犯罪を繰り返したアメリカは今じゃあの様ですよ。

 

この本については、南京事件について今の時代の個人が調査報道的手法で調査するという部分はとても良いと思います。

ただ全体として見ると作者の色が濃く出ていて、残念ながら中立な内容とは言えないですね。

特に終盤の日露戦争の話は蛇足というか、明治からの時代を俯瞰して見ようと言うならこの本ではなく別の本を出すべきでしょう。更に言うと、この作者は目の前のことしか見えてなくて視点が狭いので、物事を俯瞰して語るには不向きな人だと思います。

 

この本で何度も南京事件を無かったことにしようとする人達について考察したり、他国の人への差別意識について考察したりしていますが、それだけで戦争への立場を語ろうとか片腹痛いです。

ほら、毎年この時期に大量に発生するあいつらが居るじゃないですか、核兵器への廃絶を訴えつつ大阪や東京の大空襲の被害をガン無視しているクズども。原爆被害者には丁寧に追悼しておきながら、大阪や東京の空襲の被害者のことなんか何も悲しんでいないゴミのような奴ら。

戦争に対する立場を語るなら、ああいう平和を口にしながら人の尊厳を踏みにじってる連中も考慮するべきです。戦争を煽る者だけが戦争の原因ではありません。

 

今の日本では戦争を犯罪だと言い切れる人間はまだまだ少なくて、所詮この作者もその域には達しておらず、自分の手の届くところにいる人達を批判して正義漢ぶってる程度の人でしかないというのが余計な付け足し部分から露呈しているのがなんともアレな一冊でした。

調査の部分だけ書いていればよい本なのになぁ・・・