kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「模倣の殺意」を読んで

kindleのセール本、良くも悪しくも推理小説ですね。

古きよき時代の推理小説です。

 

知る人ぞ知る名作らしいですが、推理小説に関してはつまみ食いしてる程度なので不幸にも私は知りませんでした。

 

あっさりして登場人物の心の機微をあまり書いてないので人物の動きがやや唐突に感じられる部分もありますが、必要なことはきちんと提示されているので推理小説としては問題ないと思います。7月7日に服毒自殺したと思われる人物について、面識の無い二人の登場人物が交互に探偵役としてまったく異なる推理をしてそれぞれ別の人物を犯人として追い詰めていきます。推理小説好きでまだ読んだことがない人なら間違いなく楽しめるでしょう。

 

ただ中身は昭和40年代半ばの話なので、いろいろと時代的な部分に戸惑っちゃいます。まず当然として携帯電話なんか無い時代なのですが、親子電話って今どれくらい通じるんでしょう。今でも家では固定電話だったり職場では内線があったりするからまだ大丈夫なのかな?

それに作中だと会社でも旅館でも病院でも個人情報だだ漏れなんですが、思い返してみると昭和ならそんな感じですよね。技術の進歩だけじゃなく、社会のモラルもUPして今の日本は推理小説を書くのも一苦労なんだろうなぁ。

そりゃ日常ミステリーが増える訳だ・・・

一番戸惑うのは金銭感覚で、あの時代だと多分物価的には今の半分から三分の一くらいでしょうか。プラモデルなんかは5倍近く高くなったものもあるけど、衣類みたいに逆に安くなってるものもあるので難しいところですが、500万で殺害を決意するのと一千万で決意するのとではやっぱり印象が変わりますよね。

これが明治時代くらいならあまり気にならないんだろうけど、ちょっと近い時代な上にあっさりとした描写のおかげで時代背景が分かりにくいという、よく言えば色あせていない文体なので細かい違和感が気になっちゃったんだと思います。

 

推理小説としてならとても面白かったですよ。