kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

魔術士オーフェンを読みなおして

人間、四十年以上も生きているといろいろと間違いを犯します。
後になってみると、何故そんなことをしたのか理解に苦しむようなことをしてしまったりするのです。私にとってそんな苦い経験の一つが、オーフェンシリーズをリアルタイムで読んでいたということでした。

 

何故今さらになってそんなことを言い出すのかというと、半年くらい前にkindleのセールで見つけて、続編が出ていることに気づいて全巻購入したのですよ。
本編のはぐれ旅新装版十冊と、しゃべる無謀編七冊と、新シリーズ十冊を。
しゃべる無謀編はkindleだから当然CDはついて無くて、何がしゃべるのか意味不明ですが・・・

 

オーフェンシリーズがどういうものかというと、当時流行っていたRPG風ファンタジーに似ているようで、ちょっと傾向が違うファンタジー小説でした。
魔術師は居ても決まり切った呪文はないし、何故か凄い格闘技能の持ち主で暗殺者だし。ドラゴンという言葉はあっても、いわゆる爬虫類的な外見のドラゴンは存在しないし。当時としてはかなり捻った設定を下敷きにしていて、そこに引きつけられた人も多かったと思います。


私は作者のデビュー作が気に入っていて、このシリーズの一巻の何所かほろ苦い結末も好きでした。二巻でいきなりギャグ方向にブーストがかかった時も、快く受け入れました。今にして思うと、あそこがこのシリーズのピークでしたね・・・

 

このシリーズに不運だったのは、メディアミックスの雑誌が発刊されて手軽な連載枠確保の為に番外編が持てはやされたこと時代だったということですね。
ライトノベルという言葉を蔑称のように使う人がいますが、その原因はコレとかスレイヤーズの番外編だと私は思います。


当時は何故あんなのが持てはやされたかというと・・・娯楽が少なかったのですよ。
まだインターネットという文明の利器が存在ず、アニメも人海戦術で作られていて本数が少なく質もそれほど高くなく、当然インターネットラジオもありませんでした。
そんな時代にオタクがオタク的なものに接するのに一番手軽な手段が、本屋で本を買うことだったんです。だからその手の本が粗製乱造され、それでも暇を持て余したオタクが満足できる量には達していなかったのです。
もう入れ食い状態だったんでしょうね・・・


そんな中でコレの番外編である無謀編も過大に評価されていたのです。ライトノベルバブルの絶頂期だったんですよ。今の目で見ると無謀編はきついですね。いや、当時からけっこうきつく感じてはいたのですが、あの頃は選択肢が少なかったから、小出しにされる新設定を目当てに読み続けていたんですよ。

ドラゴン種族とかチャイルドマン教室とか、こっちも読んでないと全部分からないですからね・・・

コギーとかキースみたいな出鱈目なキャラも初めは新鮮な感じだったんですが、同じような場面で同じようなことを繰り返すだけなのですぐ飽きるし・・・

そして本編の方も、情報を小出しにしてストーリーを引き延ばすという手法が早々と取られていたんです。まだキムラック編くらいまでは我慢出来たのですが、それ以降が・・・
ホント、どいつもこいつも思わせぶりなこと言うだけで、実際に真実が分かればそんなの最初から言っておけよという肩透かしな展開ばかり。挙句の果てにあの何も終わっていないラストですから、記憶に蓋をして忘れようとした人も多かったでしょう。

 

そんな残念な記憶しか残っていない人にこそ、新シリーズはお勧めです。
作者もいろいろ反省したのか、展開はかなり改善されています。
あのくだらないラストがただの通過点として書かれているので、少なくとも初めの一冊目「キエサルヒマの終端」は読むべき。前作のラストまで読んで凄い時間を無駄にしたなぁという感じた人は多いと思いますが、これ読むと少し報われた気分になります。

 

新シリーズで何がいいかってね、あの地人兄弟が出てこないんですよ。
途中からは居なくても全然問題無くなってたのに、ページ数を稼ぐ為に無駄に騒ぎまくってた引き延ばしの主犯が出てこないんです。これだけでも展開がスムーズに進むと言うものですよ。


それにキャラのその後もいろいろ分かりますからね。特にキムラック編のキャラのその後の激動ぶりが凄い。まあ途中で作者のくせなのか、ちょっとダレますけどね。
コギーとか無謀編のキャラの出番が多くなって、キースの弟子とかいろいろ訳の分からないキャラも出てきてちょっとアレになりますけどね。


まあこの作者の作品読んでたら、シリアスを続けられない体質だって諦めるしかないんでしょう。デビュー作ではそんなこと無かったんだけどなぁ・・・


ラストの方も文庫版のラストよりマシだし、昔の引き延ばし展開は大嫌いだけど本編のキャラや設定は嫌いじゃなかったという人なら、新シリーズは楽しめると思います。