kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

アン・レッキー 著 赤尾秀子 訳 「叛逆航路 ラドチ戦史」を読んで

kindleでお安くなっていたのと、英米で新人賞総なめという話を聞いて購入したのです。

 

ラドチという架空の文明を描いた、宇宙が舞台のSFですが、これは読む人をかなり選ぶ内容ですね。
前半部分は正直面白く感じなくて、危うく途中で投げ出すところでした。
後半は普通に面白いです、普通に・・・

 

凄い賞をいっぱい取ってるからと期待すると、かなり厳しいです。

何がそんなに辛いかというと、設定とストーリーのアンマッチですね。

設定が壮大な割に、やってることがいちいち凄くショボいんです。この本の表紙もでっかい宇宙船がデデンと書かれていますが、はっきり言って表紙詐欺。
色々な星を征服しているラドチ文明ですが、その征服時の武器が銃ですからね。
なんかやってることが大航海時代のスペインによる植民地支配レベルなんですよ。
宇宙船は出てきますが、スペースオペラ的な華々しい戦闘はありません。基本的に対人の銃撃戦です。支配地の住民が銃を隠し持っていただけで、支配者側は右往左往しちゃいます。

 

主人公の属躰という設定も、伊藤計劃さんの「屍者の帝国」の屍者と成田良悟冲方丁の小説でよく出てくる意識共有タイプのキャラを足して二で割った感じであまり目新しさはないですし。

 

ラドチでは性別を区別せず誰もが「彼女」と呼ばれるというのも、何故そうなったかとか、それによって何が変わってくるのかとか説明もなく、特にストーリー的に重要な設定ですらなく・・・
性別の区別をしないなら夫婦という形態もないだろうに、家族という概念はあるようなんですよね。

前半はそんなふうに設定と物語との乖離に気づく度にイライラして、心の中で話を進めるのに邪魔な設定リストをだらだら追加していました。

 

途中で設定なんか無視して読めばいいんだと気づいて、後半になって新しい設定があまり出てこなくなることもあって、ようやく気楽に読み進めることができるようになりました。

まあなんと言いますか、新人が張り切っちゃって設定を盛り込めるだけ詰め込んだけど、新人なのでそれを生かすことがほとんど出来ませんでしたという、ある意味新人賞にはふさわしい作品なんだと思います。
私が審査員なら票は入れないけど、賞に選ばれても特に反対はしないという感じの作品ですね。

今持っていないなら買うことはお勧めしませんが、既に持っていて途中で投げだしちゃっているのなら、設定なんて属躰以外はほとんどストーリーに関わらないので、そんなもの気にしないで読み進めていくことをお勧めします。