kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

ジャレド・ダイアモンド著 楡井浩一訳「文明崩壊」を読んで

「銃・病原菌・鉄」も読みましたが、実際に読んでみたかったのはこっち。

文明が崩壊するという現象をいろいろな面から検証して、今でも継続している文明と滅びた文明の間にどんな違いがあったのかということを論じるとても痛い本です。

 

前の「銃・病原菌・鉄」の時も言いましたが、過去に起こったことなんて偶然の積み重ねでしかありません。
それを結果だけ見てどうこう言っても、その事実に関係するパラメーターがたくさんあればあるほど、都合のいい部分だけを抜き取ってどのようにでも解釈は出来るのです。
どんなものにもメリットとデメリットがあって、状況によってどちらがクリティカルに作用するかは運の要素が大きい訳ですが、結果からだけ判断しようとすると失敗した方のみ駄目なところがあって、成功した方にしか良いところがなかったみたいに思えるんですよ。今回はその都合のいい部分だけ抜き取って自分の主張にしてみました感が半端ないですね。

 

それに「銃・病原菌・鉄」のころよりさらに長ったらしく回りくどい文章になってます。まるで一旦書き上げたものの出版社の提示する頁数に足りなかったので、後からいろいろ付け足したみたいな感じ。
人気作家も大変です。

 

作者がそんな苦労までして何を伝えたかったかというと、このままでは地球温暖化でいろいろ危ないので皆でなんとかしましょうということ。
地球温暖化はあなたにとっても人事ではないのですよという啓蒙本です。


だから火山の噴火で一夜にして滅びたポンペイは無視だし、地球温暖化を連想させるような穏やかな変化には言及しても、津波地震みたいな急激な自然現象は軒並み無視されてます。自分の都合のいいことのみをチョイスして、あたかも自分の言ってることが正しいという印象操作をしている訳ですね。

 

まあ作者の主張は正論だと思いますが、内容の方は印象論に頼り過ぎていて胡散臭く感じる話でもあります。
特に今の社会の様々な問題を解決する上で、人口を減らすことは実に大きな効果を生み出すということを作者自身も認めておきながら、そちらを掘り下げないのは人口減少主義者の私としては納得できないところ。
狂信者や中国共産党でもあるまいし、普通の社会では既に生まれてしまった人達をなんとかすることはできないので、人口減少の為に出来ることなんて限られてはいるのですが、作者がそちらを熱心に主張しないのは別の理由があるのでしょう。
自然保護は一部の団体にとって金になりますが、人口減少主義なんて語っても今の社会ではまだ金にならないですからね。

 

過去に起こったことと現在起こってることは完全に分けて論じてくれたらまだ評価もできますが、自分に都合よく語れるケースだけ抽出して過去から学べとか言われてもねぇ。

読みものとして楽しむ分にはいいですが、鵜呑みにするにはやや偏ってますので、その辺を判断できない人にはお勧めできません。
また斜め読みの技術は必須かと・・・