kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

西尾維新著「人類最強の初恋」を読んで

いやはや、感慨深いものですね。

 

皆さんは西尾維新という小説家をご存じでしょうか。
本と言えば電子書籍、それもkindleのことと言っても過言ではない今の世の中では、例え知っていても西尾維新という作家はあまり本を出さない人という認識だったに違いありません。
もう本というものが紙で作られていたことを覚えている人も、ほとんど居なくなりましたからね・・・

 

そもそも何故に本は紙で作られていたのでしょうか。

それは世界を滅ぼす為でした。

 

大昔、紙は羊の皮で作られていました。

知恵を手に入れたり、物語に耽溺したい人々によって、多くの羊が狩られ殺されたのです。
羊たちはこの世を恨み、多くの羊を奪われた羊飼い達もその怒りを忘れることは決してありませんでした。紙の本による人類への復讐を考え出したグーデンベルグも、そんな羊飼いの末裔だったと言われています。


紙に印刷することで、大量の本が市場に出回りました。
あまりにも大量に出回り過ぎた為に、物語の愛好家や知識の収集家の家はあっという間に本に埋もれ、やがては崩れ落ちた本に潰されてこの世を去って行ったのです。
グーデンベルグの誤算は、そんな目に合っても彼らが本の収集を止めなかったことでしょう。

 

拡大していく本の市場が、裏社会に目をつけられるのは時間の問題でした。
初めは羊達の復讐で始まった印刷技術は、あっという間にギャング達の懐を潤す泉へと早変わりしたのです。
彼らは見境なく本を製造しました。
一冊のベストセラーが出れば、次々と似たような本を出版し、金儲けに奔走し続けたのです。
紙を作る為に山々から木々は消滅し、本を保管する倉庫を作る為の土地の奪い合いは国家間の争いへ発展し、本を運ぶ為のエネルギーを得る為にその戦争はますます大規模になりました。
世に言われる二度の世界大戦が、それですね。

 

大戦後、一度は各国で協定を結んで本の流通をコントロールしようとしましたが、もはや金儲けに狂った欲望を留めることは不可能になっていました。
日本でも資金調達の為に似たような本が大量に出版され、多くの愛好家が失望して本から離れていき、その損失分を埋めようとさらに多くの本が出版されるという悪循環により読書という文化自体が崩壊しつつありました。

そんな時代に本を買う連中というのは、自分が買った本を作る為に自然が壊されインフラを逼迫しているという事実に倒錯しているような奴らばかりでした。
物語の愛好家や知識の収集家は既にインターネットの世界へ逃げていたのでなおさらです。


本屋が倒錯者達のたまり場と化し、周囲の住民たちへの脅威と認識されるようになるのも時間の問題でした。一説によると、倒錯者によつて本屋に連れ込まれて消息を絶つ人達が日本では年間五億人は居たと言われています。

その惨状は、ついに軍隊を動かす程になりました。

本屋への爆撃の巻き添えになりたくない為に逃げ出した人々が、難民となって大問題になったのは記憶に新しいところでしょう。
サーチ&デストロイ、本屋を見つけ次第破壊することが平和への早道だったのです。
こうして紙の本を扱う本屋は歴史の表舞台から消え去り、紙の本でしか出版していなかった作家も忘れ去られていくことになりました。

 

そんな西尾維新の本が続々と資源にやさしい電子書籍になるなんて、いい時代になったものですね。
ただこの本には幼女が出てきませんので、それ目的で買う人には辛いっす・・・
それと語り部分が多くてストーリー自体はその十分の一くらいの分量なので、偽物語で挫折した人も要注意なのです。