「南極点のピアピア動画」を読んで
セール中なのでピックアップ。
実際には紙の本を読んでるし自炊もしてるので、買い直しです。
kindle paperwhiteで気持ちよく読むならやっぱりkindle版の方がいいし、セール中のお値段なら買いなおす価値は十分ありますね。
内容はいつもの野尻さんらしく、実に生活感あって希望に満ちたSFです。そういう点では過去作の「ふわふわの泉」に近いかもしれません。
ピアピア動画はニコニコ動画だし、表紙のイラストがどう見ても例のボーカロイド意識してるので、若い人向けというか若い人に媚売ってるように見えてしまうかもしれません。
でもインターネットが流行りだす頃を知っている人間には実に感慨深い内容だと思うので、おっさんで未読な人にも是非読んでもらいたいです。
野尻さんの本は何処までが日常で何処からがSFなのか、SF部分も最後には大半が日常生活に溶け込んでいて、その境界線が曖昧なとこが心地いいんですが、ある程度の年齢の人にとってこの本ではとくに曖昧な部分が多くなるんですよ。
実際、ニコニコ動画とかボーカロイドなんて20年前から見たら十分以上にSFですよね。
音声合成ソフトが人格的なイメージ与えられてアイドル化してるなんて、20年前にそんな話書いても尖りすぎていて誰もついてこれなかったでしょう。せいぜい人気のあるアイドルが実はプログラムで作られた擬似人格だったて、そんな逆のパターンがいくつかある程度です。
よくこの20年くらい日本は停滞してるって言う人いますけど、彼らはどんな世界で生きてるんでしょうかね。既に20年前の感覚ではSFでしかなかったものが日常に溶け込んでいる、そんな世界に生きている我々だから、読んでる内にこの本の現実とSFの境目がどんどん分からなくなってきて、希望に満ちた明日がすぐそこに広がっているような酩酊感が実に心地よいです。