ハリー・ポッターシリーズを読み終わって
kindle Unlimited で読み放題だったハリー・ポッターシリーズをようやく読み終えたのですよ。
面白いか面白くないかで言えば面白いですが、これが世界中で子供達に人気があるというのは恐ろしいですね。
最近はイギリスのEU離脱やらアメリカのトランプさん当選やらいろいろと予想外のことが起きていたのですが、このシリーズを読んでようやく欧米の情勢というものに納得出来ました。
要はこのシリーズを楽しんでいた若い世代が成人して政治に影響を及ぼす年齢になったということですね。
このシリーズが読者に訴えかけていることは
1.人の出来は生まれもった才能で八割が決まる
2.気に食わない奴は悪い奴だからぶっ殺せ
3.今すぐに殺しておかないと後でもっと酷いことになるぞ
この三点に要約されます。
この教えに従って元からその国に住んでいた人達は移民を攻撃し、攻撃された移民やその子供達は先住民を攻撃しているのでしょう。
トランプ派は反トランプ派を攻撃し、反トランプ派はトランプ派を攻撃しているのでしょう。
お互いが自分をハリー・ポッターだと思い、相手をヴォルデモート卿だと断じているので、決して攻撃の手を休めることなく相手が破滅するまで攻撃し続けるのでしょう。
こんな世の中を見て、作者は嬉しくて楽しくてたまらないでしょうね。
歪んで間違った世界でハーマイオニーのように、無駄な正しさを論ずる自分に酔いしれて愉悦に浸っているのでしょう。
さて、ダンブルドアという狂った老人に洗脳されたハリー・ポッターという少年兵が、社会に都合の悪いテロリスト達を司法手順を経ずに抹殺していくという胸糞の悪くなるこのシリーズですが、今日は諸悪の根源たるダンブルドアについて語りたいと思います。
ダンブルドアというのは権力欲こそあまりないのですが、個人に対する支配欲と混乱した状況を好むトリックスターでした。
例えば彼がまだ一介の教師であったとき、トム・リドルの凶行を見逃して秘密の部屋もそのままにしておきました。
その方が面白そうだったからです。
この時に身代わりで罰せられたハグリットに親身にしてやり、彼の信頼を勝ち取りました。
ハグリットはダンブルドアのせいで濡れ衣をかぶったのに、逆に忠実な騎士となったのです。
このような皮肉がダンブルドアは大好きでした。
後で役に立つかどうかより、面白いと感じるからそうしていたのです。
だからトム・リドルのことも、深くは考えていませんでした。
せいぜい彼が大きくなった後で、お前の悪事をばらすぞと脅せば面白いことになるかもしれない程度でした。
ルーピンを入学させた時も、秘密がばれないかとびくびく怯える彼を観察したくて彼を誘ったのです。
彼の無様な姿を楽しみつつ、彼自身からは感謝される立場が楽しかったのです。
だからルーピンに友達が出来て、ダンブルドアへの依存度が減った時は面白くありませんでした。
ダンブルドアは四人の中で最も出来そこないのペテグリューに働きかけて、その友情に亀裂が入りやすいよう操作していました。
結局、卒業までにその働きかけが功を奏することはなかったのですが、その後の悲劇には大いに関与することになりました。
ダンブルドアの支配の根幹は、情報の分断です。
誰にも嘘をつかず、一人一人に別々の情報を小出しに与えるか、あるいは必要な情報をわざと与えないことです。
例えばスネイプが仲間になった時、ダンブルドアはその理由を誰にも伝えませんでした。
その結果、スネイプを心から信頼するものは現れず、スネイプ自身もダンブルドアしか頼る者がいない状態がずっと続くことになりました。
ハリーとスネイプの断絶も、ダンブルドアが情報を与えないことで成立させていました。
ダンブルドアの私兵である不死鳥の騎士団は、個々とダンプルドアとの結びつきは強いものの、横の連携という意味ではダンブルドア自身の手によって脆弱なものに調整されていました。
それがいかんなく発揮されたのは、ハリー・ポッターが額に傷を得た事件でした。
トム・リドルが別名を引っさげて凱旋したのは、ダンブルドアにとっても不測の事態です。
ただそれまでの仕込みと偶然が組み合わさって、ダンブルドアにとって実に楽しい状況が生まれました。
ルーピン達の友情を壊そうとしていたダンブルドアによって、既にペティグリューの心は大いに揺れていたのです。
ダンブルドアはそこへ、更にトム・リドルがいかに敵に対して残虐かを吹きこむだけでよかったんですよ。
シリウスに対してはトム・リドルの狡猾さを教え、シリウスが秘密の守り人となることを躊躇わせました。
結果、ペティグリューは秘密の守り人となり、親友を裏切って自分だけが助かることを決意します。
誤解してほしくないのですが、ダンブルドア自身はそれを強く狙っていた訳ではありません。
単に面白いと思って事態を混乱させていただけです。
ダンブルドアの悪事はここからです。
ペティグリューが裏切ったと知ったとき、ダンブルドアは急いでポッター家へ駆け出しました。
わざわざ逆転時計で時を遡った可能性もあります。
こうしてトム・リドルがポッター家へ侵入する前に、ダンブルドアは透明マントを纏ってハリーの傍に待機していました。
勿論、ハリー自身をトム・リドルの分霊箱に仕立て上げる魔法を使う為です。
ハリー・ポッターが偶然母親の愛による奇跡で助かるなんて都合のいいことが、そう簡単に起きる訳がありません。
恐らく偶然聞くことになったトロレーニーの予言からの発想でしょう。
学生時代に生意気だったトム・リドルとジェームズ・ポッター、その二人に意趣返しをする絶好の機会でもありました。
自惚れていたダンブルドアは、この時点でトム・リドルが既に複数の分霊箱を作っていたことに気づきませんでした。
自らも不死の研究をしていたダンプルドアは、そんなことができるのは自分くらいだと思っていたのでしょう。
その後、秘密の部屋が再び開かれるあたりまで、ダンブルドアはハリーもトム・リドルも自分の掌の上だと考えていたに違いありません。
ペティグリューをウィズリー家へ誘導したのも彼だと思われます。
賢者の石を廃棄したと偽って完全な私物にしたこともあり、気が大きくもなっていたのでしょう。
秘密の部屋の事件の後、トム・リドルの分霊箱が他にもあると気づいてダンブルドアも焦りを感じるようになります。
その後も次々とトム・リドルに出し抜かれ、ダンブルドアは本格的にハリーを私兵として活用することを考えました。
その時分のダンブルドアの目的は、目障りなトム・リドルの抹殺と自身の不死性の確立です。
ハリー少年兵がその片方の目的を達成したのはこの物語のファンならよく知るところでしょう。
ではもう一つの方は?
これも半分は達成しています。
魔法の絵に描かれた人物が動き出すのは魔法界では当たり前のことですが、絵の中の人物とそのモデルは当然のことながら別人格です。
絵の中の人物は、モデルに対しての一般的な知識があり、その知識に従って行動します。
逆に言うと、一般的に知られていないことは誰かから教えられない限り知りません。
ところがダンブルドアの絵は、彼とハリー達しか知りえない死の秘宝のことを知っていました。
それはなぜでしょうか?
あの絵は一般的な魔法の絵ではなく、身体を捨てたダンブルドアの魂そのものだからです。
分霊ではなく、魂丸ごとの器として絵を利用しているのです。
不死についての研究を続けてきたダンブルドアだからこそ可能な魔法ですね。
しかし絵の中だけというのは窮屈ではないかと思う人もいるかもしれません。
勿論、ほとぼりが冷めればダンブルドアは肉体を手に入れようとするでしょう。
トム・リドルの死から十九年も経てば、ほとぼりが冷めた頃と考えられないでしょうか。
ちょうどその時期に、彼の絵の間近に彼の名前を宿された少年が赴くことになるのがハリー・ポッターの物語のラストシーンです。
さてダンブルドアと同じ名前を持つ少年は、ホグワーツでどのような目にあうのでしょう?
勿論、作者はそのおぞましい物語をいつかは書くでしょう。
ハリー・ポッターの人気が下火になり、収入に不満が出てきた時の為に取っているのだと思います。
誠実だと思っていたダンブルドアの真実の顔がついに明かされる、ハリー・ポッターという差別と侮蔑と暴力に満ちた物語に慣れ親しんだ読者なら、それを喜んで受け入れるでしょう。
なんて胸糞の悪くなる話なことか・・・