「それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ」を読み終わって
合間合間に読んできたので発売からえらく時間が空きましたが、ようやくヤマモトヨーコの完結編を読了しました。
中断してからの新規部分は十一巻と十二巻になりますが、旧文庫版を持ってて最後が気になるという昔のファンは十二巻だけ読んでも特に問題はないです。
この物語は宇宙が舞台のお話ですが、各エピソードのステージが過去文明の残した壮大なスケールの遺跡で、その設定だけでもSF好きならお腹いっぱいになれます。
特にこれが連載されていた頃はホーキング博士の宇宙論がもてはやされていたので、ブラックホールやら真空の相転移やらの議論も熱かったですね。
反面、細かなストーリー進行にはちょっと難がありまして・・・
たぶんイベントの進行をきっちり計画立ててからその通りに書いていくタイプの作家だと思うんですが、あまりにきっちりしちゃうんでキャラの動きが逆におかしくなってしまうんですよね。例えばある時点で核となるイベントが発生するとき、その場所に居るキャラは特に問題の解決に関与せず延々と時間をつぶしているだけだったりするんですよ。
設定的にはそのイベント発生を見抜けるくらい洞察力のあるキャラが居ても、そのイベントが発生するまでは馬鹿なままです。イベントが発生して、その地点に本来ならそのイベントを解決できる能力のキャラがいなくても、何故かその時は鋭い閃きで事件を解決したりします。
おかげでキャラの印象がちぐはぐというか、作り物感が酷いんですね。
しかも後半になるに従って、イベント発生までの引き延ばしが酷くなって・・・
例えるならドラムロールを何十分も聞かされる感じです。
ドラムだけでは間が持たなくなって、シンバルやトライアングルも導入するものの連携が取れてなくて不協和音にしかなってない、十一巻はそのイベント待ちというかドラムロールだけでほぼ終わっちゃうので、タイトルっぽくいうと「不協和音のドラムロール」って感じです。
芸人の「絶対に押すなよ!」を延々一時間するようなもんです。
最近だとイベントが始まる前のドラムロールの方を微に入り細に入り書き込んで、実際のイベントの方を数ページで終わらせる笹本祐一さんのような変態もいますが、この作者の場合はそこまでの芸に達していないのが読んでいてつらいところ。
まあストーリーの進行ではなく、ステージの仕掛けの方に価値があるので、旧文庫版を揃えている方なら十二巻は読む価値があると思います。
ストーリー的にも、オールドタイマーの件は決着がつきますので。