フランシス・ホジソン・バーネット著・土屋京子訳「秘密の花園」を読んで
kindle Unlimitedを物色していたら見つけたので久々に読んでみることに。
何分名作なので子供時代にストーリーは刷り込まれていたりするのですが、細かいところは記憶にないどころか他の話と混ざって覚えてたりするので、さらっと読みなおしておこうと思ったのですよ。
読んでみて、あまりにイメージが違ったので唖然としてしまいました。
ストーリーの方はですね、そんなに記憶違いは無かったのです。
イギリスがまだインドを植民地にして華々しい栄華を誇っていた頃、貴族の女の子がインドで孤児になってイギリスの片田舎に住む叔父に引き取られて、そこで誰も入ることのない秘密の花園を見つけたり、いとこの男の子と仲良くなったりするお話。
孤児院に引き取られるのが小公女で、親戚に引き取られるのがこちらな訳ですね。
どうも私が昔読んだのは子供用にアレンジされていたようで、ストーリーはそのままなんですがヒロインの印象がまるで違っていたのです。
私の記憶だとインドで両親を亡くして悲しんでいた少女が、イギリスの田舎的な親切な人達との触れ合いで心を開いていって、そして病弱ないとこのやさぐれた心根を癒していく・・・そんな可憐な物語でした。
今回読んだのはそれとはまるで違うのです。
主人公のメアリ嬢はインドで両親にほとんど構ってもらえなかったので召使相手に傲慢に育ち、両親が亡くなった時も碌に悲しむことはありませんでした。
イギリスの田舎に連れて行かれた後も、確かに人との触れ合いはあるのですが、それよりも一人で遊んでいる時間の方が長いのです。
なんと言いますか、インドで暮らしていた無感情な女の子をイギリスの自然に放りだしたら何かに開眼したという印象。
それまで自分から進んで何かをしようとしなかったのが、イギリスの片田舎にちいたとたん庭で草花や小鳥を見て散策したり、縄跳びしながら屋敷のまわりを駆け回ったりとみるみる活動的になっていくのです。
病弱ないとこに対しても、自分はきっと長く生きられないとヒステリーを起こしてしまった彼を、看護婦や召使に命じて裸にひんむいて、「お前の身体のどこも悪くなってねぇよ、そんなんで死ぬか馬鹿野郎」(意訳)と言い放つ様は可憐とは程遠い世界ですし・・・
あれで心を開いて行くいとこの男の子もかなりやばいと思います・・・
面白いか面白くないかで言えばめちゃくちゃ面白いですが、近くにはいてほしくないタイプですね。
屋敷の主人が碌に働きもせずに優雅に暮らしていける程の恵まれた不労所得者のくせに、やたら自分が不幸だと思い込んでいるところも今の時代だと鼻につきます。
まあ古い時代のお話なので仕方ないんでしょうけど・・・
そんな訳で気分転換にはちょうどいい、とんでもないお嬢様の話でした。