kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「はたらく魔王さま」を読んで

 

元々二巻までは読んでたんですが、例のカドカワのセールの時に残りも纏め買いしまして、こないだkindleに九巻も来たので一気に読んでみました。電撃大賞は基本的に全部読む方針で一巻も刊行と同時に読んだものの趣味に合わず、アニメがびっくりするほど面白くアレンジされていたのでその勢いで二巻も読んだもののやはり趣味に合わず、それでもアニメ二期を期待する意味で読み進めてみました。小説版が趣味に合わなかった理由は今までも何度か書きましたが、魔王とか勇者とか言っても小説中では内面的にただの現代の若者でしかなく、タイトルから期待していたようなカルチャーギャップも何も無かったからです。正しくは「魔力が使えるはたらくアルバイター」でしたからね。

 

最近の魔王もの?でよくあるような、魔王とか勇者のイメージはドラクエとか他の作品ので補完してねという感じで、悪い意味で二次創作的な部分が気に入らなかった訳です。実際ドラクエ四コマ以降の魔王のイメージを知らない人だと、この作品のキャラの行動が全然理解できないと思うのですよ。

どんな作品でも過去の作品の影響から無関係ではいられないし、その年代での共通のイメージが入り込むことは仕方ないですが、作中で何の説明も無くそれを知っていることを前提として物語を組み立てているのは感心できません。逆に言うと現代を舞台とした一般作品でも、作中でその時代や背景が再構築されているようなものは時代を超えて読み続けられるものだし、そうでないものは時代とともに忘れられていく訳です。シャーロックホームズが人気なのはそのキャラや話の構成だけでなく、彼の生きた時代が物語中できちんと再現されていて、誰もがあの時代のロンドンを感じ取ることが出来るからだと思うのです。霧の都ロンドンどんどんですよ、テムズ川の流れなのです。

ところが魔王さまの方では、魔王や勇者の生きた世界なんてこれっぽっちも感じ取ることは出来なかったので私には楽しめませんでした。どっちも完全に現代の若者だもん。

 

じゃあ現代物としてどうなのかというと、現実の会社や商品を微妙に変えて登場させてる姑息さが鼻につくんですよね。「この会社は現実のあの会社を想像して読んでください、でも微妙に名前を変えてるんだから実際と違ってても文句言わないでくださいよ」という甘えがひしひしと感じられるんです。名前をそのまま使って問題にされるのが嫌なら全然別の名前にすりゃいいだけです。どうしても特定のモデルを使いたいなら、誰からも文句言われないようきちんと取材して協賛でもしてもらえばいいじゃないですか。創作をする代わりによくあるイメージをそのまま投入する、そういう部分にも悪い意味での二次創作っぽさが感じられるんですよね。

 

これはそーゆーものを選んだスタッフにも大いに問題があると思います。同人誌でこれを出すなら私もこんなに文句言わないですよ、新人賞で出しちゃったから腹立たしいんです。

 

ところが巻を進めるうちに異世界のディテールもはっきりしてきて、後付感はバリバリにあるものの勇者や魔王のその世界での有り様も描かれ始めて、五巻くらいからは私にもかなり楽しめる内容になってきました。異世界コミュニケーションの方も現代に慣れた勇者や魔王が元の世界の不便さを再確認するという、ある意味逆のカルチャーギャップになっていますが、まあ始めに考えなしにやっちゃったのでそこは仕方が無いんでしょうね。

 

次回作ではその反省を生かしてもっと楽しめる作品を生み出してくれると期待しております。勿論、アニメの二期もすごく楽しみにしていますよ。