kindle沼日記

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ファンタジスタドール イヴ」を読んで

こないだのセールのときに野崎まどさんの本をまとめて購入したので、「ファンタジスタドール イヴ」を読んだのですよ。


ファンタジスタドールはちょっと前にアニメでやってたやつですね。普通の女の子が不思議なカードを手に入れたことから戦いに巻き込まれるというカードゲームバトル的な展開で、カードの中にファンタジスタドールと呼ばれる女の子達が住んでて、時にはカードから抜け出して実体化しちゃって、バトルではちくわや豆腐で戦うお話でした。ちょっと意味の分からない説明に感じるかもしれませんが、うん、意味のよく分からないアニメだったんですよ、アレ・・・

 

で、この「ファンタジスタドール イヴ」なんですが、前日譚と言えば聞こえはいいものの、基本的にファンタジスタドールとは関係の無いSFと思っておいていいです。そもそもファンタジスタドールって言葉すら出てきませんし。

なんて言うか、いわゆる童貞をこじらせた青年がある決意するまでの物語です。彼が如何にして童貞をこじらせるにいたったか、その半生が独特の語り口で実に丁寧に描かれています。

 

ダンクーガに例えるなら、ムゲゾルバドス帝国による侵略以前の出来事しか書かれてません。葉月博士が幼少期に夜の動物園に置いてけぼりにされて、そこで見た猛獣達の荒々しさにトラウマを植えつけられたりとか、小学生の頃に動物園から逃げ出した猛獣が捕獲されたニュースを見て、人こそが獣性を押さえ込める存在なのだと認識したりとか、大学で出会った破天荒な友人との交流の中で人と人との絆が獣を超え人を超え神の領域へ至る鍵なのだと閃いたりとか、その考えを纏めた論文を目にしたイゴール将軍(当時は少佐)との協力で頭の固い軍の幹部を説得してようやくダンクーガの開発がスタートするまでの話ですね。
なにそれめっちゃ読みたい・・・

 

面白いかどうかで言うと、私はとても楽しめました。
多分アニメのファンタジスタドールの設定に興味を持つような人ならニヤニヤできると思います。無茶苦茶変化球だけどストライクゾーンには入っているという感じ。

この作者なら普通にアニメのストーリーを元にして面白おかしい話を書くことは可能だろうし、実際にそれを期待してこの作者に話を持ちかけられたと思うのですが、だからこそあえて変化球なのでしょう。
まあ基本的に西尾維新なので、読者の予想を裏切って期待を上回るのが習性みたいなもんですからね。アニメをノベライズしたんじゃなくて、そのアニメの設定に惹かれる人達をノベライズしちゃうという逆転の発想です。
いろいろこじらせた人にこそ、お勧めですよ。