kindle沼日記

電子書籍のことを中心にまったりとやっていきます

「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)」を読んで

私が放射性物質に対して強い懸念を持っているということを知った知り合いが薦めてくれたんで読んでみたんですが、ぶっちゃけ知人の意図が分からず困惑しているところです・・・

 

本の内容は、福島第一原子力発電所のあまり汚染が酷くないところで働いていた作者さんの職業体験記ですね。

被ばくに関しては大きく分けて内部被ばくと外部被ばくに分けられて、この本でさんざん出てくる防御服は機密性を高めることで体内への放射性物質の侵入を阻む・・・つまり内部被ばくを防ぐ為のものです。外部被ばくに関しては残念ながら服程度では防げませんので、そこはどれだけ被ばくしたかを身につけているガラスバッチなんかで記録して、累積値が許容量を超えたら作業停止となる訳です。

このあたりの説明は漫画では詳しくしていませんが、書かれている内容から作者が理解していることは判別できます。この本はその程度のことが分かっている前提で書かれている訳ですね。対象としている放射線の知識については、初心者でなく中級者以上という感じでしょうか。

 

ところがこの本を薦めてきた知人はそのあたりのことを全く理解していませんでした。彼はこの本を読んで安心できたらしいですが、いったい何を安心できたんでしょうか・・・

 

本の中でベテランの作業員が「放射線が怖いんならきちんと勉強しろ」と叱咤するシーンがあるんですが、実際きちんと勉強してない人がこの本を読んでも意味がないと思います。例えば紛争地帯を抱えている国の観光地へ行った人の旅行記を読んで、「あの国は言われてるほど危険なところじゃないよ」と言い出すようなもので、きちんとした理解してないと誤読するだけですね。

まあこの本を読んで安心できたなんて誤読するような人は、そもそも自分からフクシマに行くこともないだろうから心配する必要もないんでしょうけど・・・

 

この本で印象に残るのが、喫煙シーンが多いことです。
放射線の年間許容量の限界まで被ばくするのと、日常的に喫煙するのと、どちらが健康に悪いかは意見の分かれるところかも知れません。でも個人的にはぶっちぎりで煙草の方が悪いだろうと思います。眩暈・息切れ・味覚の低下とか自覚症状もてんこもりですもんね、喫煙。
ヘビースモーカーなら低レベルの被ばくによるあるかないかよくわからない健康被害なんて、気にしないのかもしれません。ぶっちゃけ私も年間許容量超えないレベルの外部被ばくだけだったらあまり気にしないんですけどね。

 

うっかり内部被ばくしちゃうと核種によっては洒落にならないし、そもそもあそこには高レベルの放射性物質・燃料棒やら放射性廃棄物がある訳で、怖いのはそれらがろくに遮蔽もされず放置されてることです。燃料棒はたまにニュースになるからまだマシなんですが、廃棄物に関してはどれだけの量が何処でどうなってる事やらまったく報道されなくて・・・やっぱりそんな所に近づくのは嫌ですね。突風やら地震やらでいつそれらが周囲に撒き散らされるか予想なんてできないんですから。


もちろん、廃炉作業をされている方達はそんなことが起きても大丈夫にするための作業をしている訳ですが、逆に言うと廃炉作業が続いている限りその危険は続いているということです。そんな訳でこの本を読んで安心できる要素なんて私には一つもありませんでした。


まあ何度も言うように高レベルの放射性物質には近づかなきゃいいだけなので、私自身の心配をするとこはありませんが・・・

 

私が放射線に関わってたころはフィルムバッチだったんですが、もうなくなってガラスバッチになってるんですね。こんなところもいろいろ進化してるんだなぁ・・・